さよならはいわない。

i will never say good-bye,my love

さよなら大好きな人 ずっと大好きな人

昔ってさ、海の日は7月20日に固定されてたよね

 

海の日は毎年変動するけど

この日この思いは変わらない

 

今日は最後まで

泣かずにこの記事を書ききるのが目標

 

別に彼女とケンカした訳じゃないよ

昨夜も長電話で寝不足だけどね

 

 

俺は携帯電話をどうしても所有したくなくて

20世紀が終わる頃までは

その主義を貫いてたんだけど

 

逆にあの時は

それでよかったのかも知れない

 

携帯電話を所持した今では

電源を切ってから寝るので

 

そんな感じで

 

1999年当時の連絡手段は

必然的に固定電話のみだった

 

やけに蒸し暑かった

あの夏の日の朝早く

けたたましく部屋の電話が鳴った

 

『こんな時間に間違い電話かよ』

 

目を覚ましてしまったが

夏掛けの毛布に潜り込んで無視を決め込んだ

 

だがしかし

 

留守番電話に設定するのを忘れていたため

電話は鳴り続ける

 

そして鳴り止まない

 

こっちも意地になって

受話器は取らない

 

やがて着信音は治まったが

 

すぐにまた掛かって来た

 

『これは何かある』

 

直感したので電話に出てみる

 

父親だった

 

「ばぁちゃん亡くなったから帰って来い」

 

情けないほどに

貧乏バンドマンだった俺は

北海道までの急な飛行機代を用立て出来ず

 

短大生の彼女に3万円借りて

羽田へ向かった

 

空港で弟と合流

管制塔のトラブルが原因だったと記憶しているが

飛行機が飛ばない

 

暑さと苛立ちを抑えるため

 

それまでの数年間

会うことも話すこともなかった

弟と二人静かにビールを飲む

 

氣分もまったく上向かずに過ごしたが

 

予定より数時間遅れで

夕方ようやく実家に到着

 

いつもは飛びついて迎えてくれる

愛犬めりぃが

この日はやけに大人しい

 

家を訪れる人間たちの

物悲しい空氣感が伝わったのだろうか

 

横たわる祖母の姿と対面しても

いまいち実感が湧かなかったのだが

 

ばぁちゃんもう喋らないんだね

 

ひと晩お線香を絶やさぬ為

弟と、叔母のヒロコ姉ちゃんと、俺の三人で

ばぁちゃんの傍らに寄り添う

 

弟と姉ちゃんは

日付を跨ぐことなく爆睡

 

『こいつらなんて薄情なんだ!』

 

若干そんな怒りを覚えたりもしたが

 

俺はたった一人

朝になるまで

象の形をした小さなbassを奏でて弔った

 

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母親が起きて来たので

俺は少し眠らせてもらう

 

いとことたちに暫くぶりで会ったもんだから

お通夜の日は

酔い潰れてお寺で寝てしまった

 

早朝に帰宅しシャワーを浴びて

いよいよ今日は告別式

 

これで本当に

最後のお別れ

 

もう全然駄目

 

泪止まんねーの

 

「柩を閉じるから釘を打て」

 

親父が訳のわからんこと云って来た

 

なんで俺がそんなことしなくちゃならないんだよ!

 

「儀式だから」

 

知らねーよ!そんな命令すんな!!

 

ヒロコ姉ちゃんまで泣いてんじゃん

 

初めて泣き顔見たよ

 

きっとあれだ

 

ばぁちゃんいつも笑ってたからだね

親子だから似たんだよ

 

だってばぁちゃんさ

誰にも一度も怒らなかったもん

 

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ただただ黙って佇んでいた

 

あの日の

じぃちゃんの姿まで

思い出しちゃったから

 

もうこの話終わりね。