さよならはいわない。

i will never say good-bye,my love

天女の様なその物言い(仮)

躓いて

箱をひっくり返してしまったけれど

 

中身は拾い集めずに

放って置くことにする

 

今すぐ必要なものは

そこに入っちゃいないから

 

上着を脱ぎ棄て

レースのカーテンを僅かに開けた

 

外界の様子を覗うも

今宵は金木犀が薫って来ない

 

窓辺で微睡み

徐にグラスを傾ける

 

誰のために生きている

何のために生きている

 

覆い隠すことが当たり前となって

この暮らしの中から見失いそうだ

 

おもてに出て

少しだけ歩こう

 

静かではないが

賑やかでもない街

 

目の前に拡がる

 

深海より

火山へと通づる道

 

彷徨ううちに

 

霞みゆく空の中

ひと筋の光を見つけた

 

それは果たして

希望の鑑なのか

 

君には見えたかい?

 

多くの人々は

氣づくこともないだろう

 

満月の下

今年初めて目にした花火

 

そこには確かに

貴女の匂いが在る

 

あの日君は

僕の肩に

そっと頬を寄せた

 

そのぬくもりに

また触れられたなら

 

不意に我へ還る

 

そろそろ

戻る時間だね

 

まだ続くその寝息を

もう少しだけ感じていたい

 

本当は

 

傍にいて欲しいんだ

 

もしも

言葉に出来るのなら

 

何か変わるだろうか

何が変わるだろうか

 

月灯りが照らす

青くて白い素肌に

 

何も云わず

背を向けて歩き出す

 

振り向いたら

きっと引き止めてしまうから。