俺ら東京さいぐだ
東京へ出たなら銭コア貯めて
東京でロックンロール演るだ
そんな野望のもとに
北海道の片田舎から上京した少年は
二年間の専門学校通いと
三年間の仮面会社員生活を送る
その合間に
音楽活動を行ってゆくにあたり必要な
基礎となる知識と経験
そして十分な資金を貯めた
ここまでは
親の目を欺くためにやって来た
ここから先は
自ら想い描くスタイルで音楽活動をする
務めていた会社を辞めることは
親の了承を得られたが
そこには
ひとつだけ条件があった
再就職先に関しては
家業と同じ業種であること
だがそれでは
制限が多すぎるのだ
私にそのつもりは毛頭ない
会社勤めしながらでも
音楽中心に動けるのであれば
わざわざ転職なんてしません
私は埼玉から神奈川へ拠点を移し
晴れてフリーターとなった
「チャーリーズ・バー」という
カラオケスタジオで働くのだ
親には
再就職先が決まったことだけを告げ
そこそこ順調に
そのまま1年ほど過ごしていたのだが
これがどうゆう訳か
あるとき親にバレてしまった
「チャーリーズ・バー」という
勤務先の情報が漏れ
その店の名前から
どこかの飲み屋で働いている
そう勘違いされたようだ
こんな風にうざいリサーチしてくるの
勿論アノ父親ね
電話が来たのは
母親からだったけど
私はその際
今まで黙っていた
音楽に対する熱い想いを
包み隠さず全て伝えた
それを聴いた母は
大変安堵した様子で
「母は貴方がどんな道を選ぼうとも
いつでも君を応援しているよ」
そんな嬉しい言葉まで添えてくれた
そしてその旨を
父にも伝えておくとのことで
お互いとてもスッキリした状態で
この日は電話を終えた
数日後
不意に自宅マンションのインターホンが鳴った
フツーに出てみると
声の主は
何と父親だった!
私が親の意向に背き
フリーター生活をしていると知り
わざわざ北海道から
何の前触れもなくやって来たのだ
そのとき丁度
部屋に彼女が遊びに来ていたので
外で話そうということにした
あの頃の私と云えば
乳首が隠せるほどの長髪に
アムラー現象による極細眉
そんな風貌の私と対峙し
父は怒りを隠せない様子
近所の小さな喫茶店で
ナポリタンを食べながら
数年ぶりに親子の直接対話
父にも母のときと同様
私の思いの丈を正直に話す
予想通り
理解は得られなかったが
「話は解かった」と云い残し
父は帰って行った
想定外の出来事だったが
これにてそれぞれ両親へ
自分の本心を伝えることが出来た
後ろめたさもなくなったことだし
これで堂々と胸を張って
音楽が出来る
これで本当に
前を向いて歩き出せる
私はどこか
希望に満ち溢れたような
清々しい氣持ちだった
しかし・・・
その僅か数日後
私に宛てられた
一通の書留が届きます
それこそが
許されざる事件の幕開けでした
明日につづく。