さよならはいわない。

i will never say good-bye,my love

⑤涙で綴るパパへの手紙

俺ら東京さいぐだ

 

東京へ出たなら銭コア貯めて

東京でロックンロール演るだ

 

そんな野望のもとに

北海道の片田舎から上京した少年は

 

二年間の専門学校通いと

三年間の仮面会社員生活を送る

 

その合間に

 

音楽活動を行ってゆくにあたり必要な

基礎となる知識と経験

 

そして十分な資金を貯めた

 

ここまでは

親の目を欺くためにやって来た

 

ここから先は

自ら想い描くスタイルで音楽活動をする

 

務めていた会社を辞めることは

親の了承を得られたが

 

そこには

ひとつだけ条件があった

 

再就職先に関しては

家業と同じ業種であること

 

だがそれでは

制限が多すぎるのだ

 

私にそのつもりは毛頭ない

 

会社勤めしながらでも

音楽中心に動けるのであれば

 

わざわざ転職なんてしません

 

私は埼玉から神奈川へ拠点を移し

晴れてフリーターとなった

 

「チャーリーズ・バー」という

カラオケスタジオで働くのだ

 

親には

再就職先が決まったことだけを告げ

 

そこそこ順調に

そのまま1年ほど過ごしていたのだが

 

これがどうゆう訳か

あるとき親にバレてしまった

 

「チャーリーズ・バー」という

勤務先の情報が漏れ

 

その店の名前から

どこかの飲み屋で働いている

そう勘違いされたようだ

 

こんな風にうざいリサーチしてくるの

勿論アノ父親ね

 

電話が来たのは

母親からだったけど

 

私はその際

 

今まで黙っていた

音楽に対する熱い想いを

包み隠さず全て伝えた

 

それを聴いた母は

大変安堵した様子で

 

「母は貴方がどんな道を選ぼうとも

いつでも君を応援しているよ」

 

そんな嬉しい言葉まで添えてくれた

 

そしてその旨を

父にも伝えておくとのことで

 

お互いとてもスッキリした状態で

この日は電話を終えた

 

数日後

 

不意に自宅マンションのインターホンが鳴った

 

フツーに出てみると

 

声の主は

何と父親だった!

 

私が親の意向に背き

フリーター生活をしていると知り

 

わざわざ北海道から

何の前触れもなくやって来たのだ

 

そのとき丁度

部屋に彼女が遊びに来ていたので

 

外で話そうということにした

 

あの頃の私と云えば

 

乳首が隠せるほどの長髪に

アムラー現象による極細眉

 

そんな風貌の私と対峙し

父は怒りを隠せない様子

 

近所の小さな喫茶店

ナポリタンを食べながら

 

数年ぶりに親子の直接対話

 

父にも母のときと同様

私の思いの丈を正直に話す

 

予想通り

理解は得られなかったが

 

「話は解かった」と云い残し

父は帰って行った

 

想定外の出来事だったが

 

これにてそれぞれ両親へ

自分の本心を伝えることが出来た

 

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後ろめたさもなくなったことだし

 

これで堂々と胸を張って

音楽が出来る

 

これで本当に

前を向いて歩き出せる

 

私はどこか

希望に満ち溢れたような

清々しい氣持ちだった

 

しかし・・・

 

その僅か数日後

 

私に宛てられた

一通の書留が届きます

 

それこそが

許されざる事件の幕開けでした

 

 

明日につづく。